アスベストは危険？問題になるケースやサイディング材についてもを解説！
2023.06.06更新 塗装工事の基礎知識
かつては 「奇跡の鉱物」として言われたアスベストは、非常に安価であるにもかかわらず、耐火性や断熱性に優れており、高度経済成長期にはさまざまなシーンで重宝されました。
しかしその有害性が広く認知されて以降、法律で使用が制限され、現在ではアスベストを含む建材は完全に禁止されています。
この記事ではアスベストのリスクと、外壁にアスベストが使用されている科の見分け方、除去する際の費用相場などを解説します。
目次
アスベスト（石綿）とは
アスベストは、自然界に存在する繊維状けい酸塩鉱物であり、「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。その極めて細い繊維は飛散しやすく、吸入されると健康被害をもたらすため適切な措置が必要です。
過去にはビルや構造物の保温断熱材としても使用され、吹付け石綿による作業が行われていましたが、昭和50年には原則禁止されました。
その後も、スレート材、ブレーキライニング、ブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などに使われていましたが、現在では原則として製造等が禁止されています。
石綿による問題を予防・解決するために「労働安全衛生法」や「大気汚染防止法」「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」などで、規制・処置を定めています。
あらかじめ適切な処理を行うことで、石綿が意図せず飛散したり、吸引することを防ぎ、健康被害や環境への影響を回避することができます。
アスベストによるリスク
アスベストは建材や塗材に添加されていて、セメントや合成樹脂で固められています。これにより、アスベストの粉じんが飛散することはないと考えられているのです。
しかし建材の劣化や解体などで粉じんが飛散すると、呼吸によって肺に吸い込まれ、人体に吸収されることなく肺に刺さるため、健康被害の原因になります。
アスベストが関連する主な疾患には、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫が挙げられます。重要なことは、アスベストによる健康被害は、症状が現れるまで長い時間がかかることです。そのため、「サイレントキラー(静かな時限爆弾)」とも呼ばれています。
アスベストが含まれている可能性があるサイディング材の種類
ここからはアスベストが含まれている可能性があるサイディング材の種類について解説していきます。
窯業系サイディング
窯業系サイディングは、防火性・耐火性、耐震性、耐久性に優れた住宅外壁材です。主原料はセメントと繊維質の原料で、板状に成形されます。そのため、ガルバリウム鋼板などの金属製外壁材よりも、自然な木目調の質感が演出できるというメリットもあります。
窯業系サイディング製造においてはアスベストの含有量の影響が問題視され、2004年までにアスベスト含有の窯業系サイディングは製造を終了しました。
建材複合金属系サイディング
建材複合金属系サイディングは、表面材に金属を用い、内部には断熱材を裏打ちしている製品のことです。その特徴は軽量でありながら凍害に強く、断熱性にも優れていることから、主に住宅の外壁に使用されています。
かつてはこの建材にアスベストが含まれていたことがありましたが、1990年にはアスベストの使用が中止されました。現在ではアスベストを含む建材の使用は法律で禁止されています。
外壁のサイディング材にアスベストが含まれているかどうかの見分け方
アスベストを使用した外壁材の製造は2004年に終了したため、2004年以降に建てられた住宅の外壁は安全であると考えられます。
しかし業者が在庫として残っていた製品を使用した可能性もあるため、注意が必要です。アスベストは健康に影響を与える危険物質であるため、少しでも不安な場合には、専門の業者に調査を依頼することが重要です。
アスベストによるリスクが高まるケース
仮にサイディング材にアスベストが含まれているとしても、住み続ける分には問題にならないケースも多く、建材の劣化が進まない限りアスベストが飛散する可能性は少ないのです。
ではどういったケースのときに注意が必要なのでしょうか。ここからはアスベストによるリスクが高まるケースを解説していきます。
外壁のサイディング材が劣化しているとき
アスベスト含有サイディングは、セメントや樹脂で固められることが一般的で、飛散する心配は少ないといわれています。しかしながら劣化の進んだ外壁では、アスベストが飛散する可能性があります。
たとえば、ひび割れや傷が目立つようになり、そこから徐々にアスベストが飛散する事があります。このような状態は、周囲の人々の健康を害する可能性があるため、迅速で適切なメンテナンスが必要です。
サイディング材を張り替えるとき
外壁の張り替えを行う際に、サイディングをそのまま取り外すことができない場合があります。サイディングを取り外すためには切断するなど、一部を壊す必要があるためサイディングに含まれるアスベストが外部に飛散する恐れがあるため注意が必要です。
アスベストが含まれた外壁を撤去する際には、法律に則って適切な作業を行わなければなりません。適切な作業とは、作業員が適切な保護具を身に着け、作業現場は養生され、撤去したアスベストを決められた方法で処理されることを意味します。
このような作業には専門知識や技術が必要であり、通常のリフォームに比べて費用が高額になる可能性があります。
アスベストの除去方法
アスベストはどのように除去することができるのでしょうか。ここからはアスベストの除去方法について解説していきます。
アスベストが含まれた外壁材を撤去する
アスベスト含有の外壁を撤去することで、劣化した際のアスベスト飛散のリスクを根本から取り除きます。このアスベストを含む外壁を撤去する方法は除去工法とも呼ばれ、アスベストそのものを取り除くことができ、飛散防止対策としては最も効果的と考えられます。
工事は外壁の湿潤化、手作業による粉塵の発生を防ぐための取り外し作業から始まります。特殊な作業に加え、アスベスト含有の廃材処理と、撤去費用、新規外壁設置費用など、高額なコストがかかることが多いです。
自治体によっては、撤去にかかる費用の一部を補助する融資制度や、補助金制度が設けられている場合があります。撤去作業を行う場合には、一度お住まいの地域の自治体に確認してみることをお勧めします。
囲い込み工法や封じ込み工法で対応する
アスベストが含まれた既存の外壁をリフォームする方法として、除去工法以外に、囲い込み工法や封じ込め工法があります。
囲い込み工法は既存の外壁に新しい外壁材を上から重ねる工法で、除去工法よりも費用を抑えることができます。また、アスベストを含有した既存の外壁を除去する費用が捻出できない場合にもお勧めです。
一方、封じ込め工法は、既存の外壁に塗装を施すことでアスベストの飛散を防止します。低コストな工法で、リーズナブルにアスベスト飛散防止策を施すことが可能です。ただし塗装は経年劣化によりはがれてしまうことがあるため注意が必要です。
外壁のアスベスト除去にかかる費用の相場
アスベストの問題は建物の所有者にとって深刻な問題となっています。外壁に使用されているアスベストは人体に悪影響を与えるため、除去が必要となりますが、その費用が気になるところです。
アスベスト処理業者の中には、適切な処理方法をとらずに安く受け付ける業者も存在しています。これらの業者は注意が必要です。
外壁のアスベストを除去する費用の相場は、300㎡以下の場合、1㎡あたり2〜8.5万円程度とされています。ただしこの金額は除去のみの費用であり、外壁を新しく交換する費用やその他の作業は含まれていません。
建物の部位や方法によって、費用は大きく異なるため、工事金額に幅が出てしまいます。
引用：アスベスト含有吹付け材の除去費用は、目安として、いくら位かかりますか。（国土交通省）
外壁のアスベスト除去を依頼する業者選びのポイント
アスベスト除去は信頼できる業者に依頼することが重要です。信頼できる業者を選ぶ際は、3つのポイントを確認する必要があります。
まずは、業者が必要な資格を所持しているかどうかを確認しましょう。次に業者が調査に十分な時間をかけているかどうかを確認する必要があります。最後に業者がゴミを適切な方法で処理しているかを確認しましょう。
これらのポイントで、いずれかに問題がある場合は、その業者に依頼することは避けるようにしましょう。
業者をインターネットで探す場合は、ホームページに施工事例が載っているかどうかにも注目してください。工事実績が豊富な業者の方がアスベストが飛散する心配は少なく、信頼性が高いことが多いです。
まとめ
2004年以前に建てられた住宅には、サイディングをはじめとする様々な建材にアスベストが含まれている恐れがあります。長期間使用すると健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、不安な方はぜひ調査を依頼してください。
アスベストの取り扱いには特殊な技術が必要であり、素人が行うことは危険です。除去するのにも費用がかかってしまいますが、気づかぬうちに体を蝕んでしまう恐れがあるので放置はしないようにしましょう。
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