無機塗料とは?特徴やメリット・デメリット、費用相場や施工事例について解説!
2023.05.18更新 塗料の基礎知識

外壁塗装を検討しており、業者から「無機塗料」を勧められたものの、本当に採用すべきなのか悩んでいる方もいるでしょう。
無機塗料は耐候性に優れた塗料とはいえ、シリコン塗料やラジカル塗料などと比較すると単価が高く、聞きなれない塗料なので自宅に採用するとなると不安になるのではないでしょうか。
そこで今回は、無機塗料とは何かを解説します。メリットやデメリット、施工事例なども解説しますので、外壁塗装を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
目次
無機塗料とは
無機塗料とは、炭素を含まない無機物を配合して作られている塗料のことです。
具体的な無機物の例を挙げるとガラスや鉱石、レンガなどがあり、紫外線にさらされても劣化しないので半永久的な耐候性を持つのが特徴です。道にある石やビルのガラスが何十年経っても劣化しないのは、無機物だからだといえるでしょう。
また、無機物のままだと固すぎて塗料として使えないので、無機物と有機物を混ぜて塗料として使えるようにしたものが「無機塗料」です。純粋な無機物ではないものの、無機物が配合されているため高い耐候性を有しています。
ただし、無機塗料は何パーセント以上の無機物を配合しなければならないといった決まりはありません。なかには無機物が少量しか配合されていない、もしくは効果が実証されていない無機塗料を高い値段で販売しているケースもあるので、注意が必要です。
有機塗料と無機塗料の違い
外壁塗装の塗料の大半は有機塗料であり、アクリル塗料やウレタン塗料、シリコン塗料、ラジカル塗料などはすべて有機塗料に分類されます。
そもそも有機物とは、炭素を含む化合物で加熱すると燃える、紫外線にさらされると劣化する性質を持ちます。木材やプラスチック製品、紙類、アクリル、シリコンなどが挙げられ、有機物を主成分とする塗料を有機塗料といいます。
ただ、一口に有機塗料といっても、成分の違いによって種類が異なります。
- 【塗料の4大成分】
- 樹脂:塗料の骨格を作る。樹脂(アクリル、シリコン、フッ素など)によって、塗料の耐候性やグレードが変わる。
- 溶媒:樹脂を溶かしたり薄めたりする液体のこと。水と溶剤(炭化水素系・アルコール系など)に分かれる。
- 添加剤:塗料の性能を補助的に向上させるもの。
- 顔料:塗料の色彩を作る。
塗料の成分のうち、有機塗料には有機物である樹脂成分が含まれますが、樹脂の種類によって塗料の耐候性やグレードに差が生じます。また、樹脂は紫外線による影響で徐々に劣化するため、年数が経つとチョーキングや剥がれといった症状が見られます。
一方、無機塗料は樹脂成分があまり含まれておらず、無機物が主成分となります。紫外線で劣化する樹脂(有機物)が少ないため、有機塗料と比較すると高い耐候性を持つのです。
無機塗料の価格相場
無機塗料は有機塗料と比較して耐候性に優れているので、塗り替えのスパンを長くできるものの、その分単価が高めです。
アクリル塗料 |
1,000~1,200円 |
3~8年 |
ウレタン塗料 |
1,800~2,000円 |
5~10年 |
シリコン塗料 |
2,500~3,500円 |
7~15年 |
フッ素塗料 |
3,500~4,500円 |
12~20年 |
無機塗料 |
5,000~5,500円 |
20~25年 |
外壁塗装で使用されることの多いシリコン塗料と無機塗料を比較すると、おおよそ2倍の単価であることがわかります。
ただ、無機塗料のなかでも耐用年数の長いものであれば、25年ほど塗り替えが不要になるので単価が高くても価値があるといえるでしょう。
しかし、すべての無機塗料が耐候性に優れているわけではなく、なかには価格に見合った性能が期待できないものもあるので塗料選びは慎重に行う必要があります。
また、こちらの表に記載した塗料の単価や耐候年数はあくまで目安であり、塗装する広さや施工箇所、業者によって価格に差が生じることに加え、周辺環境などによって塗料の持ちが変わるので、あくまで参考程度に考えましょう。
外壁塗装に無機塗料を用いるメリット
無機塗料は有機塗料と比較して単価が高いものの、外壁塗装に無機塗料を用いることにはさまざまなメリットがあります。
ここでは、無機塗料を用いるメリットについて解説します。
耐候性に優れている
無機塗料は耐候性に優れているのが最大の魅力といえるでしょう。
先に解説した通り、無機塗料は紫外線でほとんど劣化しない無機物を含み、紫外線で劣化してしまう樹脂成分(有機物)の含有量が少ない塗料です。
無機塗料は純粋な無機物ではないとはいえ、有機塗料と比較すると高い耐候性を持ちます。シリコン塗料やフッ素塗料を押さえ、外壁塗装の塗料の中で20~25年という最長の耐用年数を持ちます。
カビやコケが発生・付着しにくい
無機塗料はカビやコケが発生・付着しにくいのもメリットの一つです。
外壁にカビやコケが発生すると美観を損なうだけでなく、根を張って外壁を傷めたり、湿気が溜まって外壁内に雨水が浸透したりして、住まいの寿命を縮めるリスクがあります。
カビやコケは有機物を栄養として繁殖しますが、無機塗料は有機物の含有量が少ないのでカビやコケが発生しにくいのです。
ゴミや汚れが付着しづらく落ちやすい
無機塗料はゴミや汚れが付着しづらく、汚れが付着しても落ちやすいことがメリットです。
無機塗料は静電気が発生しにくいので、空気中のゴミや汚れが付着しにくく、さらに汚れが付着しても親水性が高いので雨水で洗い流されます。
親水性とは、水を馴染ませる性能のことであり、雨が降ると塗膜と汚れの間に雨水が入り込んでするりと汚れを洗い流してくれるのです。すべての汚れが落ちるわけではありませんが、大通りに面しているなどで汚れやすい外壁にはうれしい機能でしょう。
燃えづらい不燃性の塗料
無機塗料は燃えにくい不燃性の塗料であることもポイントです。紙や木材などの有機物は着火すると黒く焦げて炭になりますが、石やレンガは着火しても燃えてなくなりません。
無機塗料は100%無機物ではないので全く燃えないわけではありませんが、有機塗料と比較すると燃えにくいので、万が一住まいの近くで火事が起こっても、燃え移る可能性を低くすることができます。
外壁塗装に無機塗料を用いるデメリット
無機塗料は機能性の高い塗料といえますが、万能ではありません。
ここでは、外壁塗装に無機塗料を用いることのデメリットについて解説します。
価格が高い
無機塗料の最大のデメリットは価格の高さでしょう。
先に解説した通り、1㎡あたりの塗料の単価は以下の通りです。
アクリル塗料 |
1,000~1,200円 |
3~8年 |
ウレタン塗料 |
1,800~2,000円 |
5~10年 |
シリコン塗料 |
2,500~3,500円 |
7~15年 |
フッ素塗料 |
3,500~4,500円 |
12~20年 |
無機塗料 |
5,000~5,500円 |
20~25年 |
1㎡あたりでみると数千円の差ですが、外壁塗装は家全体を塗装するので数十万円の差になります。
しかし単価が高い分、耐用年数が長いので、費用対効果を十分に考えて検討するのがおすすめです。
クラックが発生しやすい
無機塗料は単価が高いほか、クラックが発生しやすいのもデメリットといえます。
無機物はガラスや鉱物のように硬いものなので、塗料に無機物を含むと硬い塗膜が形成されます。塗膜が硬いのは頑丈そうで、良いイメージがあるかもしれませんが、外壁自体にクラックが発生した場合、一緒に割れてしまう可能性が高いのです。
そのため、クラックが生じやすいモルタルやコンクリート外壁に塗装するのはリスクが高いといえます。
施工に知識と技術が求められる
無機塗料は塗膜が硬くなる性質があるため、扱いが難しいことに加え、期待する性能を発揮させるには適正な厚みで、均一に塗装する技術や知識が求められます。
外壁塗装業者ならどこに依頼しても同じというわけではなく、職人によって知識量や技術力が異なるのが実情であり、高性能な塗料を採用するからこそ、施工業者・職人を慎重に選ぶ必要があります。
とくに無機塗料は高単価で採用率が高くないため、施工実績の少ない業者が多い点には注意しなければなりません。
完全にツヤを消すことができない
外壁の光沢を出すツヤは「ツヤあり・7分・5分・3分・ツヤ消し」の5段階に分けられます。
外壁のツヤを消すと落ち着いた印象になるため、全くツヤを出したくない方も一定数いるでしょう。しかし、大手塗料メーカーが販売する無機塗料にはツヤ消しできるものがありません。
ツヤの程度を調整することは可能ですが、調整して3〜5分ツヤまでの商品が多いうえに、無理に調整すると塗料本来の機能が失われる可能性があります。
無機塗料での外壁塗装がおすすめなケース
無機塗料にはメリットとデメリットがあるため、特徴を押さえて採用することが重要です。
まず、外壁塗装の塗り替えのスパンをできるだけ長くすることを最優先に考えるなら、無機塗料がおすすめです。無機塗料の最大のメリットは20~25年という耐用年数の長さなので、塗り替えの手間を省きたい方にぴったりでしょう。
さらに、大通りに面していて外壁が汚れやすい、日当たりが悪くカビやコケが発生しやすいといった周辺環境の方にもおすすめです。
ただし、塗料の単価が高いので、コスト重視の方には不向きでしょう。10~15年に一度の塗り替えなら面倒に感じない、ある程度の耐用年数があり、一度の外壁塗装にかかる費用をできるだけ抑えたい方はシリコン塗料やラジカル塗料がおすすめです。
また、無機塗料はクラックが発生しやすいので、モルタルやコンクリート外壁などは相性がよいとはいえません。
このように、無機塗料のメリットとデメリット、外壁材の種類などを踏まえ、優先したいことと照らし合わせながら採用すると、後悔のない外壁塗装になるでしょう。
住宅の外壁塗装に用いられる代表的な無機塗料
ひとえに無機塗料といっても、メーカーによってさまざまな商品があります。
ここでは、住宅の外壁塗装に用いられる代表的な無機塗料を解説します。
日本ペイント「アプラウドシェラスターNEO」
大手塗料メーカーの日本ペイントが販売している無機塗料が「アプラウドシェラスター
NEO」です。
アプラウドシェラスターNEOは水性2液型無機塗料であり、優れた耐候性と低汚染性を持っています。弾性機能があるため、無機塗料のデメリットである割れやすさを軽減しており、クラックが発生しやすい外壁にも採用しやすいのが魅力です。
日本ペイントが想定している耐用年数は20年であり、無機塗料ならではの長い耐用年数が期待できます。
エスケー化研「エスケープレミアム無機」
「エスケープレミアム無機」はエスケー化研から販売されている無機塗料であり、低汚染性にこだわっているのが特徴です。
無機塗料はもともと低汚染性に優れていますが、エスケープレミアム無機は一般的な無機塗料よりも親水性を高めているのがポイントです。親水性によって外壁表面に付着した汚れを雨水で洗い流せるようにしています。
さらに、静電気が発生しにくいため、汚れが付着しにくくなっているのもポイントです。
関西ペイント「アレスダイナミックMUKI」
「アレスダイナミックMUKI」は関西ペイントの無機塗料であり、有機物と無機物の両方の特性を活かしたハイブリットな塗料です。
無機塗料のデメリットである塗膜の硬さを有機塗料で軽減して伸縮性を実現しつつ、耐候性の高さにも優れています。クラックの生じやすいモルタルやコンクリート外壁をはじめ、サイディングやALCなどさまざまな外壁材に使用できます。
無機塗料での施工事例
ここでは、無機塗料で外壁塗装を行った住宅の事例を紹介します。
塗料の色は今回紹介する事例のものだけではありません。商品によってさまざまなカラー展開があり、製品のカタログから選択可能です。
こちらの施工事例を参考に、仕上がりイメージを膨らませてみてください。
ホワイトの無機塗料で清潔感ある外壁に
外壁塗装と屋根塗装を同時に施工した事例です。外壁には耐用年数20~25年が期待できる無機塗料を採用しています。
もともと白色の外壁でしたが、再塗装することでややツヤを残しつつも清潔感のある白色に仕上がっています。
引用元:前橋市小相木町S様 遮熱フッ素塗料の屋根・無機塗料の外壁塗装工事
最高峰の無機クリヤー塗料を使用した外壁塗装
外壁の色あせやコーキングの劣化が見られ、無機塗装による外壁塗装が行われました。
こちらの事例では、外壁材の意匠性をそのまま活かせるクリヤー塗料が使用されているのが特徴で、外壁材のレンガ模様を残した塗装となっています。
クリヤー塗料は無色透明なので変化を感じにくいイメージがあるかもしれません。しかし、外壁材の素材感を残しつつ、ツヤをプラスする効果があり、こちらの事例でもツヤがプラスされて美しい見た目に変化しています。
引用元:太田市場町Y様 最高峰の無機クリヤー塗料を使用した外壁塗装工事
チョーキングやクラックのあった外壁を補修し、耐久性のある無機塗料を塗装
屋根のトタンの剥がれや外壁のチョーキングやクラックなど、さまざまな劣化症状が見られたため、屋根・外壁塗装が行われました。
まずは劣化状態を入念にチェックし、きちんと補修してから無機塗料を塗装しているのがポイントです。
もともと外壁はやや黄味がかった色でしたが、ホワイトの無機塗料を施工したことで印象が大きく変わっています。
引用元:太田市新井町M様 耐久性抜群の無機塗料を使った屋根外壁塗装工事
モルタル吹き付け仕上げの外壁に無機塗料を施工
紫外線による影響で塗膜の剥がれやベランダの雨漏りが発生しており、外壁塗装を含むメンテナンスが行われました。
モルタル外壁に日本塗装の無機塗装、軒裏天井には通気性の優れた専用塗料を施工しており、箇所ごとに塗料を変えているのが特徴の事例です。
こちらの事例のように予算や要望に合わせて、施工箇所ごとに適した塗料を提案をすることも可能です。
引用元:前橋市鼻毛石町U様 モルタル吹き付け仕上げ外壁塗装工事
無機塗料で新築時の鮮やかな外壁を再現
海外住宅をイメージさせるような色鮮やかな外壁ですが、色が鮮やかな分、塗膜の剥がれや膨れが目立つ状態となっていました。
新築のときの色を再現したいというご要望のもと、無機塗料のマウンテンブルーというカラーを採用し、施工後は爽やかなブルーで色ムラのない外壁に仕上がっています。
引用元:足利市下渋垂町H様 新築時のお色を再現したサイディング外壁塗装工事
まとめ
今回は無機塗料の特徴について解説しました。
無機塗料は炭素を含まない無機物を配合して作られている塗料のことで、耐候性が高いことが最大の特徴です。20~25年という有機塗料にはない耐用年数を実現できるので、塗り替えのスパンを長くできるのが魅力でしょう。
また、防汚性やカビやコケが発生しにくいという特性もあるので、外壁が汚れやすい立地の住宅や、日当たりが悪く湿気が溜まりやすい住宅にもおすすめです。
ただし、塗料の単価が高い、製品によってはひび割れしやすいといった注意点もあるので、自宅の外壁材との相性や予算に合うのか慎重に検討しましょう。
外壁塗装専門業者のミヤケンでは住宅の状態や希望に合わせて最適な塗料の提案が可能です。もちろん、無機塗料の提案も可能ですので、群馬県や埼玉県にお住まいで外壁塗装を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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