2012年から販売されているラジカル塗料は、塗料の中でも比較的新しい塗料です。
外壁塗装の際、選択肢の1つとして比較されることもあると思いますが、新しい塗料なのでよく知らないという方も多いでしょう。
ここでは、ラジカル塗料の特徴やメリットについてご紹介していきます。
ラジカル塗料の特徴や仕組みを知りたい人、メリットやデメリットを知りたい人は参考にしてみてください。

■ラジカル塗料とはどんなもの？

ラジカル塗料とは、正式には「ラジカル制御型塗料」と呼ばれるものです。
2012年に日本ペイントから”パーフェクトトップ”という商品名で発売されたのをきっかけにラジカル塗料が開発されています。
ラジカルとは、塗料を作る段階で使用される白色顔料（酸化チタン）から発生するものです。使用後すぐに物質が発生するのではなく、雨や紫外線、風などに触れると少しずつ発生する劣化因子になります。
塗膜内部で発生したラジカルは、塗膜の劣化を引き起こしてしまうため、外壁にチョーキング現象や塗膜の割れを発生させてしまいます。
チョーキング現象が出てきても、すぐに塗装が剥げ落ちることはありませんが、劣化している証拠なので早めの対処が必要でしょう。

このように一般的な塗料に含まれるラジカルで生じる原因を抑えるのが、ラジカル塗料です。
ラジカル塗料には、可能な限りラジカルの発生を抑えるように作られているため、劣化速度を穏やかにすることが期待されています。
「アクリル」「シリコン」「フッソ」といった塗料のグレードのことではありませんので区別する必要があります。

■ラジカル塗料の仕組みについて

ラジカル塗料は、どのような仕組みでラジカルの発生が抑えられているのでしょうか？
ラジカルは外壁塗装などで使用される塗料の顔料が、雨や紫外線、風などに触れたことで発生する劣化因子ですが、これを抑制や発生させないために高耐候酸化チタンや光安定剤（HALS）が含まれたものがラジカル塗料です。

高耐候酸化チタンには、ラジカルを発生させる成分となる酸化チタンを抑制してコーティングする力があります。これによって、ラジカルに紫外線が当たらないようにできます。
さらに光安定剤を配合することで、ラジカルが酸化チタンの中から出てしまった場合でもラジカルを抑えられる仕組みになっています。
ラジカル塗料に高耐候酸化チタンと光安定剤（HALS）の2つが含まれることで、他の塗料に比べて高い対候性塗膜が実現できるのです。

■ラジカル塗料のメリット

ラジカル塗料には、どのようなメリットがあるのでしょうか？
◎耐久性が高い
ラジカル塗料は、一般的なシリコン塗料に比べて耐久性が高い塗料とされています。
通常シリコン塗料などには、紫外線対策が可能なラジカルを抑制するものが含まれていませんが、最近のシリコン塗料の中にはラジカル制御機能を持った塗料もあります。
一般のシリコン塗料が約8年から10年ほどの耐久年数に対し、ラジカル制御機能を持ったなら約13年前後の耐久性があります。
高対応型白色顔料を使用しているためこれまで淡い色の塗料では汚れにくくし、劣化によって生じるチョーキング現象を抑えることができるのです。
同じ「シリコン塗料」でも耐久年数が違うのは驚きですよね。

◎コストパフォーマンスがよい
現在、最も普及している塗料がシリコン塗料です。
シリコン塗料が人気の理由は、フッ素塗料と比較すると施工価格が大幅に安価であることと、塗料として安定した性能が備わっているからです。
このシリコン塗料とほとんど同じ施工価格であり、さらにフッ素塗料と負けなくくらいの性能があるのがさきほど説明した高耐久シリコン塗料なので、これらを比較するとかなりコストパフォーマンスが良いでしょう。
例として価格を比較してみると、ウレタン塗料が1㎡/1800円～2000円、シリコン塗料が1㎡/2000円～3000円の場合、高耐久シリコン塗料は1㎡/2500円～3500円程度です。

◎汚れにくい
ラジカル塗料は、一般的なシリコン塗料と比較すると汚れにくいというメリットがあります。
ラジカル塗料にはツヤありとツヤなしがありますが、ツヤありの方が光沢もあるので汚れが付きにくくなっています。
フッ素塗料は、ラジカル塗料よりも汚れにくい性質がありますが、価格が高いのでコストパフォーマンスの方が高くなりがちです。そのため、価格や性能のバランスはラジカル塗料の方が優れているでしょう。

◎防カビや防藻性がある
ラジカル塗料には、塗膜劣化の目安となるカビや藻を防ぐことができます。これにより、外観の美しさを長持ちさせることができ、快適な住環境が整えられます。
またカビや藻は、アレルギーや喘息などの健康被害に繋がる恐れがあります。風通しの悪い所でも、ラジカル塗料なら効果を発揮してくれるでしょう。

◎どの下地でも塗装可能
ラジカル塗料は、下地の状態に限らず塗装できるのがポイントです。
コンクリートや木材、モルタルやアルミなどの金属でも塗装可能なので、施工したい部分に使用できます。
ラジカル塗料がどこでも塗装できるのは、水性でよく伸びるからです。刷毛でもローラーでも塗れるので、作業効率もよいでしょう。

■ラジカル塗料のデメリット

メリットの多いラジカル塗料でも、デメリットになってしまう部分があります。
ここでは、ラジカル塗料のデメリットについて紹介していきます。

◎実績が少ない
これまで普及してきたシリコン塗料やフッ素塗料と比較すると、ラジカル塗料はまだ新しい塗料となります。
そのため、ラジカル塗料としての効果などを本当に一定期間感じられるのか、また状況によって本当に変化するのかがわからない部分もあるでしょう。
計算上の性能で確認できない部分は、多少あるということです。

◎種類が少ない
ラジカル塗料はまだ新しい塗料となるため、多くのメーカーで取り扱っている塗料ではありません。
そのため、限られた中から選ぶしかないでしょう。

◎濃い色の塗料は選べないことがある
ラジカル塗料は、主な成分が白色顔料です。
そのため、白の配合が少ない塗料には不向きということと、現場での色を作るのが難しいのでどんな色にもできる、というわけではありません。

■ラジカル塗料を発売しているメーカー

ラジカル塗料は、新しい塗料なので取り扱いメーカーも種類も少なくなっています。
そこで、ラジカル塗料を取り扱っているメーカーをご紹介します。

◎リファインシリーズ（アステックペイント）
アステックペイントから販売されている超低汚染リファインシリーズはシリコン・フッソなどすべてのグレードに高耐候型白色顔料を採用しています。
汚れにつよい性能にプラスして塗膜の劣化を抑えることができるため耐久性に優れています。
同メーカーから発売されているラジカル制御型塗料には価格を抑えたシリーズもあるので選びやすいのが特徴です。

◎パーフェクトトップ（日本ペイント社）
日本ペイント社から発売されているラジカル塗料「パーフェクトトップ」は、ラジカル塗料のトップシェアとされています。
2012年に初めて登場したラジカル塗料で、アクリル樹脂が原料となっています。
パーフェクトトップには、ラジカルを抑制させる光安定剤と高耐候酸化チタンが含まれていて、比較的安価で高い耐久性が期待できる塗料でしょう。

◎プレミアムシリコン（エスケー化研）
エスケー化研から発売されているラジカル塗料「プレミアムシリコン」は、2014年に登場しました。
国内ナンバーワンとも呼ばれ、発売以降人気の高い塗料ですが、この塗料の特徴はシリコン樹脂が含まれることです。
特殊なシールド層でラジカルを抑え込み、発生したラジカルをハイブリットシリコン樹脂で抑えこむ仕組みとなります。
カビや防藻など、汚れが付着しにくい特徴があります。

◎アレスダイナミック TOP（関西ペイント）
関西ペイントから発売されているラジカル塗料「アレスダイナミック TOP」は、酸化チタンまで紫外線が届くのを防ぎ、ラジカルの発生を抑制できる仕組みです。
シリコンがベースの塗料ですが、フッ素に近い耐久性を持っているので長期間外壁を美しく保ち、雨でも塗装できるのが特徴です。

■多くの塗料で採用されているラジカル制御型塗料

塗料の種類の中でも比較的新しいタイプのラジカル塗料は、まだ種類が少ないものの、ラジカルを抑制して外壁を美しく保つ効果が期待できます。
比較的安価でどのような下地にも使えますが、まだ種類や実績が足りないと感じる部分もあるでしょう。
メンテナンスを検討した場合は、ラジカル塗料のような耐久性に優れた塗料と他の塗料を比較し、適したものを選んでみましょう。